第弐齋藤 土踏まず日記 : 平山夢明『東京伝説 死に逝く街の怖い話』

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2004/05/18 (火)

[BOOK][ひ]平山夢明『東京伝説 死に逝く街の怖い話』 [bk1][amazon]

平山夢明『東京伝説 死に逝く街の怖い話』 (竹書房,\552)  [bk1][amazon]

恐怖との遭遇にもはや霊感は不要となった。ただ生きていればいい。

 平山夢明が著する怪奇小話集シリーズ3冊目。 霊だのなんだの超自然的なものが怖い原因である「『超』怖い話」シリーズに対して、こちら「東京伝説」シリーズは「人間が怖い」が主題。 もっと言うなら「頭がおかしい人間は怖い。 そして頭がおかしい人間はどこにでもいる/どこにいるかわからない、それが怖い」。 霊的なものの存在を疑う人はいても、人間の狂気を疑う人はいない。 いや、なにも狂気なんて陳腐なものでなくてもいい。 単純に、こちらのことを思いはからない他人の無配慮な悪意や暴力は、怖い。 それが自分の身にふりかかるかもしれない、という可能性の点から言っても、霊よりも怖い。 石で殴られたら痛いと同じぐらいの確実性で、そういうものは怖い。 要はそれだけの話で、それだけの話をそれだけの話で終わらせない密度と濃度で描くのが、平山夢明という人だ。 嫌すぎる、勘弁して下さい。
 シリーズも3冊目で、いつもどおり、たいへん粘性の高い、生理的嫌悪を伴う不潔な恐怖がこれでもかというほどてんこ盛り。 読んでいて、たいそう嫌な気分になれた。 飲み込む唾が苦くなる感じです。 うぇ。
 で、嫌になりながらも何で読み続けているかというと、茫漠とした人の不安がどういう形をとるか、という「想像力の在り方」として、やっぱりそれは正しい(外してない)と思えるからだ。 景気が悪いとか体感治安だの検挙率が低下してるってニュースで言ってたとか隣に外国人が越してきたとか「何かよくわからないけれど、悪い方向には変わりつつある」っていう「嫌な気分」が、ちゃんと言葉になるべきものとして言葉にされている快楽がある。 本当かどうかはともかく「本当っぽい」と感じられる。 それで十分だし、それが全てだ。 のはずなんだけど。

 (ホームページも見るとじゅうぶんにわかりますが)平山の描く恐怖は、かくある世界をどうまなざすか、っちゅうほとんど「世界観」なので……、
 フィクションであるはずのこういう話が、まわり見渡せばごろごろ転がってたり、そもそも残酷で悲惨なストーリーこそが皆さんに望まれているような空気もあるように見えたりで、まあ、ありふれてるといえばありふれてるんだけど、この嫌な気分からはなかなか抜け出せそうにないかも。 とか、思わないでもない。 うむう。

 今回も、うちの戸締りは確認した。 トイレも、ベランダも、ベッドの下も、押入れの中も。 いちおう。 念のため。

平山 夢明(著) 『東京伝説―死に逝く街の恐い話 [bk1][amazon]
竹書房(竹書房文庫) | 発行:2004/04 | 価格:\580 | サイズ:15 x 11cm | ISBN/ASIN:4-8124-1611-6
『突然、拉致され得体の知れないモノを食わされる。堕胎した胎児の頭が喋り出す。代々桜で首を吊り続ける一族に、行列ラーメン店の恐るべき隠し味。今、想像を絶する恐怖と狂気があなたのそばで起きている。息を潜めてあなたの背後を狙っている。恐怖との遭遇にもはや霊感は不要となった。ただ生きていればいい、それこそが究極のホラー体験たりうるのだ。「超」怖い話の著者が当事者からじかに聞き集めた最上級の怪奇譚。本当に怖い…ハズレなしである。』

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