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海猫沢めろん『左巻キ式ラストリゾート』 (イーグルパブリシング,\880) [bk1][amazon]

ただでさえ下層カーストである絵付き小説の中でもさらに最下層である絵付きエロ小説は、2、3年にいっぺんの割合でとんでもない奇作怪作を生み出す土壌であるので(しんかいちさとみ『ヒ・ミ・ツの処女探偵日記』とか、『ひまわりスタンダード』であるとか……あれ、2冊しか思い浮かばねえ……ダメだそりゃ)またそんな徒花が咲いたんだろうなと思って読んでみたら予想以上の綺麗な花が咲いていたのでご報告というか、ぶっちゃけ吼え狂いたいと思った。 ひ、ひぎいぃ!? ひぎいぃぃぃぃい! ひぎぎぃぃぃ!!
12人の少女が暮らす「学校」で、記憶をなくした「僕」が目を覚ます。 「学校」では数日前から連続強姦事件が起こっており、「僕」は助手としてつけられたブルマ少女・海猫沢めろんちゃんとともに、「事件」の調査を開始する。 わけもわからないうちに。 女の子たちとエッチしながら。 とか、話はそんなん。
ごめん、どうでもいい。
ストーリーは、基本的にどうでもよろしい。
おねえちゃんがたや、エロシーンも、やはり、どうでもよろしい。
ミステリである。 これはたぶん重要だと思える。(言い忘れてたけど、この小説はミステリ小説だった。)
物語を駆動させるために/しかたないし/好きだし/お客さんにもうけるだろうし/渋々ながら/などなど様々な理由はあるにせよ、態度としては「しがみつくように」ミステリというジャンルに固執している、ミステリであることに必死である、と感じた。 俺はミステリとかよく知らんし、「どうでもいいけど知っておいたほうが有利だ」ぐらいの気持ちでしかミステリにたいして接しないので、たいしたことは云えねえけど、物語を駆動させる(始まりから始まって終わりで終わる)仕組みとして、ミステリというジャンルが有効であるということだけでなくて、ミステリに対する敬意、愛(便利な言葉だね)は、ひしひしと感じられた。 この、適当でどうでもよくて中身がなんにもない空っぽクソ小説が、ただミステリであることに忠実だったってのは、ちょっと感動的であった気がする。 このエロ小説に、絶対おかしちゃならねえ聖処女が一人いたとするならば、その娘の名前は「ミステリであること」だったんだろう。
(なぜ? ジャンルに対する愛と、ジャンルに忠実でなければノベルが空中崩壊して果てるという恐怖から? わからない。)
リアルである。
驚くべきことに、このクソ小説は、リアルであることを志向していた。 しかも、ある種の速度を伴って。
それが感動的だった。
(リアルねぇ……。)
リアルっつうか、オタクにとってリアルであるっつうことがどういうことであるか、それをこの小説は描きだそうとしていた。 俺たちの、俺たちが信じるに足るリアル、その内実っつうのは、いったいどういうもんなのか、それを、この小説は描きだそうとしていた。
(疾走する、オタリアル)
俺たちが望み好むものども「だけ」で世界を構築してみると、こうなる。 っちゅうのを、この小説は描き出す。 ぺらぺらで、ストレンジで、グロテスクで、なんにもなく、そして楽しく、心地良い世界の、さらに戯画。 そいつを、至極いじわるに、この小説は、描き出す。 「まぁそうなるしかねえわな。 相応相応。」っつうヤツを。 描き出してから、これまた至極適当に、容赦なく、ぶっちゃけ、飽きたから、その世界をぶっ壊す。 ぶっ壊してみせる。世界が「ぺらぺらで、ストレンジで、グロテスクで、なんにもなく、そして楽しく、心地良」くしかないから。 がっしゃ〜ん。 おもちゃ箱をひっくり返すみたく。
それは、そのまんま、俺たちの写し姿だ。
俺たちが、望み、手に入れ、飽いて、捨てる。 そのさまを、この小説は明確に描き出す。 それは、大変にリアルである。 信じるに足るものであると、俺には感じられた。 そうなるしかないだろう。 俺たちが、俺たちであるかぎり。
(ん〜なんだろう……これは?……。)
ポイントは、「俺たちが、俺たちであるかぎり」であることで、「俺たちが、俺たちであるかぎり」=世界はかくあるのだから、俺たちは俺たちであるということを、この小説は肯定しなければならない。 最低でも、肯定するフリだけでもしなければならない。(「俺たちが、俺たちである」ことを否定する、という手もあるれど、「俺たちは、俺たちではいけない」と俺たちに云われたところで、そんなもの無効だし、そんなことを云う虚構に意義はない。)
で、この小説は、それを肯定してみせる。(ように見えるんだな、俺には。 俺はバカかもしれない)
肯定してみせるんだけど、
(ここまで読んで、これがあなたに必要だと感じるならば、これはあなたのもとに届けられるだろう。 さようなら。)
その肯定には、どこにも余裕がなくて、なんつうか、必死だ。 確実にキツイと思う。
だって選択の余地ねえじゃん? 「お前はお前やるかお前やめる、選べ」とか云われてもそこに選択肢なんてねえじゃんよ? 「俺もう、俺やめます」とは云えねえべ? もう肯定するしかないじゃんよ。 で、実は、その選択肢のなさってキツくねえか? って話さ。
たかがオタクやるぐらいのことで必死になんなよな〜、とは(わりと本気で)思うんだけどな。 みんな真面目すぎだ。 ディズニーシーにでも行くがいい。 俺たちはもっと気合い入れてのんべんだらりとダメであるべきで、じゃあ、何がしてえんだ? とか聞かれてもニヤニヤするしかなくて、でも、そのニヤニヤかっこよくねえ? とか、いろんなものを含みんで、あやふやにしながら。
とにかく突っ走れ! と云われる。
でも。とにかく突っ走れ! って云われて、ホントに突っ走るのはやっぱりバカでしかないだろ、それは。
と思うのだけど身体は動いてる、
風を切る。
走るのは気持ちいい。
このままいこう。
行けるところまで。
走れるところまで。
その先に、崖。
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