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「なにを言うんだ、クリス」キニスンはむきになって言い返した。「わたしはもちろんストーリーテラーとしても超一流だ。少年のための物語とはかくあるべし。すなわち、最速の宇宙艦、奇怪な暗黒星雲、異星の美姫、それに醜悪な複眼の怪物!」
「ぬるぬるのしょくしゅも?」とキット。
「もちろん、ぬるぬるの触手もだ!」
『ブラックロッド』シリーズ、『タツモリ家の食卓』シリーズの古橋秀之(その名に幸多かれ)が書く『レンズマン』! しかもサムライ! ハイ、勝ちです! 買うしかあるまい。読むしかあるまい。
古橋氏のレンズマン好き(?)はそれなりに知れた話(氏の実兄から「レンズマンとはぁ!」なる講義を口伝で伝授された、とか『タツモリ家の食卓』の「黄金のベルもつ男」ってアレ、レンズマンだべ? とか)ではあったと思われますが、それがこういう形で『実現』してしまうのは喜ばしいかぎりっつーか燃えるよな。だってレンズマンだよ?
で。
これは大人の仕事だなぁ。と。
原典たる『レンズマン』に愛と敬意とを表しつつ、そこから逸脱せず。己のカラーを加えつつ、ずらし、すかしながら、あくまで自分の領分で、自分の持ち味を発揮する。と、これを卒なくやってのけるこれは、大人の仕事だ。そんなふうに思った。
他のシリーズで氏が見せるどこか気の抜けたオタクにーちゃんテイストはなりを潜めて、どこか「真顔」そんな印象。
で、態度として真摯なのはいいがだからって物語も片意地はって強張っちゃってるか? といえばそんなことは全然なくて。
なんてっいってもこれは「レンズマン」なんだ。「レンズマン」といえばそれは秩序と理性の徒、たとえ太陽が燃え尽きようとも永遠に存在しつづける正義の権化なワケだ。
そこでサムライだ。その強さの大半が「東洋の神秘」で説明されてしまうあからさまにインチキな超武術を身につけた盲目のサムライがレンズマン。もうハッタリとケレンミなんていくらあってもいい。望みとあらば切腹も辞せず(本当)。
やられた。かっこいい。
『禅 ゼンガン 銃』の小姓(コショウ)それと『キャッチワールド』、<憂国>号艦長の田村邦夫と同じくらいかっこいい。そして強い。なぜなら東洋の神秘。仕方ない。やられました。
古橋氏は基本的にシャイな方なのであくまで「ヘン」をカラーとして出してきますが、物語は疑いもなく王道です。すげー面白い。
崩壊しそうなくらい圧倒的な量の憎悪とか激情を抱えた人間、特に悪の側の人間書かせると、もう燃えて燃えてしかたないな。たまらんよ。
アメコミらいくな書き文字も鮮やか、岩原祐二のイラストも善い感じ。2001年のデュアル文庫の最後を飾るに相応しい傑作であるなぁと思いますです。はい。
ところで。
シン・クザクが修めている「アルタイル柔術」っつーのは、『宇宙の戦士』でシュジュミがズィム軍曹をブン投げたあれの流れを汲む柔術と捉えてよろしいでしょうか?
「バンザイ!」「アリガトウ」
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