第弐齋藤 土踏まず日記 : 安田弘之『ちひろ』

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2001/09/24 (月)

[COMIC] 安田弘之『ちひろ』(講談社,667円)[bk1][amazon]

 風俗嬢・ちひろ。の話。

 何でも描けてしまう絵柄とはあるものだ、と思うた。例えばこの「ちひろ」を描いているときの安田弘之の絵とか。この絵柄だと、現代日本で起きることのほとんどは描けてしまうのではないのか。そういう気もする。そういうべらぼうに的確な、絵である。

 ちひろは風俗嬢で、自称「壊れて」いて、賢い。
 それは彼女が違う目をもっているからで、その違う目を幼い頃に獲得して、獲得した自分を認識した途端に「壊れる」しかなくて、ちひろは、だから賢い。平気で賢い。

 凡夫とは違うものが、違う風景が見えてしまう彼女は、奔放だ。

 凡夫には見えないあの風景を見てしまった彼女は、自分というシステムを明確に捉えていて、それを完全に制御して、世の中を渡っていく。だから、彼女は有能だし、彼女が身をおくことを決めたそこには、新たな、流れがまたできたりもするし、風俗店に流れ着く男たちは、巧みに彼女に吸い寄せられたり、もてあそばれたり、人生変えられたりもする。

 その様は、ある種、魔術的と言っても良くて、いや、自分の意志を世に通すのが魔術の本質であるのだから、まさに魔術そのものであったりもして、ああ、そうかこれは魔女・ちひろ、魔眼もつ女、ちひろの物語なのか、なんて、思ったりもする。

 だから、ちひろの目は真黒か、真白のどちらかだ。
凡夫とは違う風景を見てしまって、ある真実に気づいてしまった彼女は、だから自由だ。自由で、強くて、孤独で、どこにもたどり着けない。

 そして、そのことを「善し」と……
 しているのかな?
 いや、そもそもその程度のことは、彼女はもう通り越して。それで、雪は綺麗で、ビルの屋上で風は吹き。櫻は舞い散り、マグロは泳ぐ。のかもしれない。

 なんてことを思った。

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