とある今年の過去回顧(2009年マイベスト:フィクション)
2009年マイベスト:フィクション
今年読んだ小説/フィクションの中から2009年マイベストを選出する。
選出基準は
- 単純明快に面白かったもの
- 今年読んだことに意味があったもの
- 何らかの理由でこの記事を読んでくれている人に「読んだぜ!」って報告/自慢/アピールしておきたいもの
ぐらいで。
渡辺浩弐『吐田君に言わせるとこの世界は』
『HIPPON SUPER!』(むしろ『ファミコン必勝本』というべきか)の読者で、かつ高校生のみぎりに『モニター上の冒険』にガッツリやられている自分がこいつを読んで面白くないわけがない。渡辺浩弐が構える虚構への/現実への態度、仕掛け方はほとんど自分の一部になっている。月日が流れてても変わっていないところは変わっていないし、変わったところは変わっているな(当たり前だが)という事実を確認する作業となった。ああ、何だお前まだそこに居たんじゃねえか的な。三つ子の魂百までとはよくぞ言ったもんだね。厨二病とは「認めたくない自分の本質」の別名だよ。
文芸作品としても楽しく読ませていただいた。前半、吐田君が世を捨ててひきこもりと突き進む際のドライブ感は最高。
海猫沢めろん『全滅脳フューチャー!!!』
ビックリした。こんな小説を書けるのはこの人、海猫沢めろん以外に居らんわなぁ。地方に暮らすオタク青年の暗黒青春小説。ただしこの青年、ヤクザ*ホスト*オタクの悪魔三身合体。オタクとしてのある一定のプロトコルに従い、オタクとして了解可能なテクスチャーはまとっているように見えるけど、その行動においてはまったくオタク的ではなくて、そのギャップ、アンマッチさが、グロテスクな何事かをあぶりだしている。ように見える。リアル?
平山夢明『ダイナー』
「独白するユニバーサル横メルカトル」で2007年の「このミステリーがすごい!」の1位受賞したのはいいけど「面白いけど、でもミステリーじゃないよなー」と言われ「じゃあノンジャンルで、どこにカテゴライズされても問答無用で面白く、かつ自分にしか書けないエンターテイメントを」と志向して、事実そうなりました面白ぇ~! という小説。残虐非道にして超クール。交錯する愛憎と暴力と暴虐と血骨。ああ、そして美味しそう。
舞城王太郎『ビッチマグネット』
舞城王太郎の小説の魅力のひとつは登場人物がちゃんと考えていることだと思う。「ちゃんと考えている」ってのは自分の幸せのことを真摯に考え行動しようとするってこと。真摯に考えたからって酷いことは起き得るし、暴力でわれを失ったり、凹んで心がくしゃくしゃになったりはするんだけど。それはそれとして、やっぱり自分の幸せってのはつまるところ何で、どうやればそれができるのかってのを、全力で考え、行おうとするのは心底偉いと思うし、読むと背筋が伸びる。そのために読んでる。良いです。
村上春樹『1Q84』
何年かぶりに読んだ村上春樹(10年ぶり?)。「ああ、村上春樹だなぁ」というのが正直な感想で、それ以上の言葉は引き出していないんだけど(どんな言葉でも引き出せるし、引きあうように書かれている物語であるようにも思える)。なにより衝撃だったのは都内でこの小説が(ただの、たかが、小説が)随分と長い期間売り切れていたってこと。「小説」なんて商品を、みなさんが、売り切れるほど欲しているというその事態そのものが衝撃だった。みなさん何考えていらっしゃるんだろう? みなさんが欲しているのは、わかりやすくもない、どうとでもとれる物語が、活字で印刷されているだけの、ただの紙の束ですよ? 読むと年収があがったり、仕事ができるようになったり、彼氏/彼女/嫁/婿ができたりはしませんよ? お分かりですか? と誰かを問いただしたい気分に。
ロバート・チャールズ ウィルスン『時間封鎖』
ある日突然、地球が特殊な「膜」に覆われてしまい、時間の経過速度が外界の1億分の1になってしまう、という大上段から始まって、いかにも「SFだッ!」と思いきや、文芸としての魅力も素晴らしかった。海外SFを読んでいて、SFならではの感動からではなく、登場人物の実存的思索やなにげない文章に心を惹かれて何箇所か(あるいは十何箇所か)ページの端を折ったというのは稀有な体験だったように思う。
チャールズ・ストロス『アッチェレランド 』
そうそう、最初の短編をSFマガジンで読んで気になっていたんだった。情報技術の革新によって超加速された、贈与経済の潮流にのって生き抜く人間の姿「拡大解釈された現在」。そこで描き出された地平がビジネス啓蒙書とか下手すると新書とかに追い付き追い越されようとしてるのが21世紀的~とか思ってはいたけれど、ここではそれをさらに拡大・加速して、Web2.0の2.0部分を指数関数的に増大、量的変化は必然として質的変化を巻き起こし、やがては宇宙2.0、そして宇宙3.0へと向かいます!(キリッ ってな大馬鹿地平まで描いて見せたのが本作の善性。SF的興奮。
冲方丁『天地明察』
今年のベストオブベスト。冲方丁がこれをもって「作家を名乗る」と主張していたのがよくわかった。というのも、今作で冲方丁が目指していたのが「普通」=「普遍」じゃないかしらと思えたから。「マルドゥック」「シュピーゲル」シリーズで自家薬籠中の物としていた弾丸文体は封印、忍者・異形・アンリアルな特殊能力者も封印、ただ登場するだけで体温が二度あがる卓上ゲームも封印。これまで彼が如意としていた(だが鬼手・奇策ではあった)得物を封印し、結果あったのはただの「面白い小説」。冲方丁でなくとも良い、ただし冲方丁が描いた小説。ただ味わいました。面白かった。
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[本][リスト] ブログ「第弐齋藤」による2009年小説ベスト8。海猫沢めろん『全滅脳フューチャー!!!』、平山夢明『ダイナー』とか。 B! http://sto-2.que.jp/archives/530
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