堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』
堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』 [Amazon] を読了する。
ひでぇ話オンパレード、心底げんなりさせられる内容で、大変に楽しんだ。
サブプライム問題。貧困ビジネス。夢のマイホームはそのまま夢へと消え、借金だけが残る。貧乏人を頭からバリバリ囓っておいしくいただくのがクールなビジネスの秘訣。
弱者切捨の棄民政策。 配給食は低コスト高カロリー、ゆえに油甘物こそは貧乏人の食事。小学校に行くと無料でコーラがただで飲める(だから学校へ行こう)。「私はデブじゃない」と小汚いぶよぶよの体にマジックペンで書き散らすデブの中学2年生。スーパーサイズミー。モア、スーパーサイズミー。
医療制度の崩壊。盲腸の入院費が132万円。病気したら入院費払えず、そのまま極貧層へ、人生アウト。慢性病? 支払い支払い支払い、人生アウト。貧乏人は大きな病気したら人生アウト、中世かここは? いえ、違います、比べものにならないほど効率化されています。もっと悪い。
すばらしき戦争。戦場こそが稼ぎ場。「戦場に行けば飯の食いっぱぐれはありませんからね」ここどこ? アフリカ? 軍の貧民層リクルート。生徒の個人情報を買い取り、低所得層出身で未来がなさげな連中を言葉たくみにスカウト。豚箱発イラク経由墓穴あるいはゴミ箱着コース。
つまるところ語られているのは、貧者を挽き潰して回り続ける、巨大な仕組みについての物語なんだと思う。
ちょっとやそっとじゃ止まらない気配満々。民営化とコスト削減の成果。人間の尊厳は50セントで売却済み。次々と、生み出されていく、悲鳴、悲痛、悲惨、不幸、惨状、辛苦。大丈夫、裕福層はよりもっとバリすごすばらしく、もっと裕福になれるらしい。よかったよかった。はは。
一般に、社会現象においてジャパンは、欧米諸国を10~20年のタイムスパンをおいて追いかけているというから、これが10~20年後の(ちょうどババ引いた僕らの世代が老いぼれて、職を失ったり、病気のひとつもこさえるだろう時代だ! ワオ! 素敵ね!)ジャパンの姿なのかなぁ~と思いながらワクワクしながら読んだ。ワクワク? まぁワクワクでもしないとやってられない。 「大変に楽しんだ」とはつまりそういうことだ。
主に文化的なセーフティネットにより、これらまで酷くはならんだろう、という印象はある。主に食生活において、 10~20年程度の時間では、ジャパニーズが「安いから」という理由で米食を手放すとはちょっと思えない。米食は『スーパーサイズミー』よりはだいぶん健康的だろう……というか、食に関してはアメリカ人がアホすぎると思う。 印象があるだけでそうならないという保証はどこにもない。でも、我々がこのような未来を絶賛選択中なのは確かなので……いやはや、本当に楽しみなことだと思う。洒落でも皮肉でもなく、ただの事実として。さて、彼らは「ああ」だが、我々はどう「する」のだろう?(「なる」のではない。「する」んだ。我々が)本当に楽しみなことだと思う。
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読んでいる途中、生田武志『ルポ 最底辺 ――不安定就労と野宿』 [Amazon] の一文
かつての「資本主義か共産主義か」という「東西問題」は事実上消滅し、「南北問題」がグローバル化した結果、その南北の境界線があらゆる「国家内部」に入り込んでいるという印象である。
生田武志『ルポ 最底辺 ――不安定就労と野宿』 [Amazon]
がすとんと心に入ってきた。 ああ、これは確かに。
「もはや徴兵制など必要ないのです。」
「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。経済的に追いつめられた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく生活苦から戦争に行ってくれますから(後略)堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』 [Amazon]
とは「世界個人情報機関」なるもののスタッフの言葉なんだけど、これって、ホントにどこの紛争地帯の人の言葉なんだろう? ……政府がまともに機能していなくて貧困がはびこってて、唯一の食える商売は兵士になるだけ、とか、そういう地域の人がよくこんな台詞を口にするようなものだと思っていたけど、ねぇこれってホントにアメリカの話? と疑いたくなる。 まぁ戦争はもっともクールなビジネス、とは歴史が証明するところの事実ではあるが、今ここで、しかもアメリカで、というと……なんだか、うへぇという気分だ。 勘弁して欲しい。
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あと、頭にあったのは冲方丁『スプライトシュピーゲル IV テンペスト』 [Amazon] だったりする。
「この状況はたしかにある種の平和であり、我々が行ったゲームの帰結なのだ。 そしてまた、現実の世界で行われていることでもある」
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