井上雄彦『バガボンド』28巻
井上雄彦の不幸は『バガボンド』を描かずにはいられなかったことですが
さらなる不幸は同時代に『シグルイ』があったことだと思います。
『バガボンド』が描いているのはスポーツとしての人斬りですが『シグルイ』が描こうとしているのは本質的に異なった、特異な人間存在の追究であって、似て非なるもの、別ジャンルなわけです。
人が刀を振り回している表層のみをつかまえて同じものとしても無益。
ボンクラどもが喜んで口にする「井上雄彦は一回人を斬ってくるべき」という言葉は妄言以外のなにものでもない。恥を知りなさい。
さて今巻、吉岡一門70余名との死闘に傷ついた武蔵の物語。
吉岡一門との試合で負った傷は深く、沢庵和尚は武蔵に引退を宣言します。
「粥のごときものもあふれだささずに何が治療か!」
「28巻かけてシグルイ1巻と若干近い地平に立ったのね」
「これで武蔵の足がさっくり治っちゃったら『リアル』とどう折り合いつける気なんだろう?」
と、こころに響くこころない声を聞き流しながら、続きを楽しみに待ちたいと思います。
『バガボンド』最近面白くないよねぇとのたまう善良な市民を目の前にして『リアル』をススメながら「ならば『シグルイ』を読め!馬鹿者が!」と心の奥底で叫ぶのに、もう飽きました。
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